《 社保審・介護給付費分科会|8月30日 》
来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で30日、訪問介護と通所介護を組み合わせた新たな複合型サービスの創設が取り上げられた。【Joint編集部】
新たな複合型サービスを創設する構想は、これから制度をどう見直すかを描いた昨年末の報告書に厚生労働省が盛り込んだもの。委員からは具体化を促す声があがった一方で、「必要性を感じない」といった否定的な発言も相次いだ。
◆ 地域密着型で創設
厚労省は会合で、新たな複合型サービスの創設を検討する理由を改めて説明した。
今後さらに在宅の介護ニーズが膨らんでいくこと、ホームヘルパー不足で訪問介護の供給量が足りなくなる懸念が強いこと、訪問介護と通所介護を共に運営している事業者が多いこと、などを列挙。例えば通所介護の事業所が訪問介護も提供できるようにすれば、人材など貴重なリソースをより有効に活用していけるのではないかという。
厚労省は会合で、昨年度に実施した調査の結果も報告。通所介護の職員が訪問介護に携わるメリットを事業所に聞くと、
◯ 両サービスの連携・情報共有がしやすい
◯ 利用者との信頼関係を構築しやすい
◯ 利用者の状態をより正確に把握できる
などの答えも多かったとした。
厚労省は新たな複合型サービスを創設する場合、市町村が指定権者となる地域密着型サービスの一角に組み込む考え。1ヵ月ごとの包括報酬とする案なども出ている。
焦点は報酬の多寡だけではない。ケアマネジメントを内包する形とするか、通所介護の事業所から訪問する職員にヘルパー資格を求めるか、なども意見が分かれている。また、小規模多機能など似た機能を有するサービスとの位置付けの整理が必要、と訴える関係者もいる。
◆「更に複雑化する」
この日の会合では、新たな複合型サービスを創設すること自体を疑問視する委員も複数いた。
日本経団連の井上隆専務理事は、「なぜ新たなサービスが必要なのか。事業者間の連携を深めれば済む問題ではないか」と主張。全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「今でも制度が複雑だと言われているのに、屋上屋を重ねて更に複雑化させるのは反対。新たなサービスがないと現場が成り立たない、というエビデンスもない」と異議を唱えた。
日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は、「必要性を感じない。既存サービスの規制緩和を先行させてはどうか」と持論を展開。認知症の人と家族の会の鎌田松代代表理事は、「人材不足への根本的な対策ではない。介護職への応募を増やす施策を考えて欲しい」と苦言を呈した。
一方、全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与は、「新たなサービスの創設には意義がある。人材の有効活用、柔軟な対応による質の高いサービスの提供などが期待できる」と指摘。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「サービスの効率化や人材の有効活用など、うまくいけばプラスに働く。多くの事業者が参入して運営を続けられるよう、しっかりした報酬設定・制度設計を」と要請した。
厚労省はこれから年末にかけて更に議論を深める方針。会合後、関係者は新たな複合型サービスを創設することの是非について、「今日の意見も踏まえて検討していく」と述べるにとどめた。
※当記事は掲載日時点の情報です。