《 社保審・介護給付費分科会|2023年8月撮影 》
来年4月に控える次の介護報酬改定では、介護施設・事業所の管理者や専門職らに今より柔軟な働き方を認めるかどうかもポイントの1つになる。厚生労働省は8日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、人員配置基準の常勤・専従などの考え方をテーマとして取りあげた。【Joint編集部】
複数の事業所でその役割を兼務できる範囲を拡大したり、一定の条件のもとでテレワークを選択できる余地を広げたりする(*)など、ルールをより緩和する方向へ見直すことの是非が論点。今年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に、こうした検討を進めるべきとの提言が盛り込まれていた経緯がある。
* 厚労省は今月5日に、事業所の管理者に限って一定の条件のもとでテレワークも選択可能との解釈を明示する通知を出している。
厚労省は会合で、介護ニーズが更に膨らむ一方で現場の人材確保の難しさが増していく今後を念頭に、「サービスの質の担保に留意しつつ、柔軟な働き方を可能としていく」とのスタンスを説明。これから各サービスの人員配置基準をめぐる詳細な議論を深めていく構えをみせた。
年内には見直しの大枠を固める方針。どこまで踏み込んだ判断を下すかが焦点となる。委員からは人員配置基準を思い切って緩和するよう促す声があがった一方で、「悪循環に陥る懸念がある」などの慎重論も噴出した。
◆ ローカルルールの是正も課題
会合では民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員が、「常勤・専従要件の緩和はぜひ検討して頂きたい」と要請。日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は、「事業所間の兼務で規制緩和を要求したい。サービスの質は必ずしも介護者の数だけが担保するものではない」と言明した。
また、全国健康保険協会の吉森俊和理事は、「自治体のローカルルールが経営を難しくする要因の1つになっている。できる限り標準化し、より柔軟な運用に寄せていく必要があるのではないか」と述べた。
一方、連合の小林司生活福祉局長は、「人手不足の中で(専門職らの)兼務を進めていくと、利用者の安全やサービスの質に影響したり職員の負担が増えたりして、悪循環に陥る懸念がある」と指摘。「兼務が常態化すると、有給休暇や休憩が取りにくくなるなど処遇改善に逆行する恐れもある。離職理由にもなりかねず、慎重な検討が必要だ」とクギを刺した。
※当記事は掲載日時点の情報です。