《 社保審・介護給付費分科会|10月11日 》
来年度の介護報酬改定をめぐり、厚生労働省は11日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、これまでの議論を集約した具体策の「基本的な視点」を提示した。【Joint編集部】
柱の1つに介護施設・事業所での「働きやすい職場づくり」を掲げた。
人材不足の目下の厳しさ、今後のより深刻な見通しを念頭に置いたもの。介護職員の処遇改善・負担軽減、介護現場の生産性向上に引き続き注力するとした。生産性向上を実現する施策としては、テクノロジーの活用、介護助手の配置、経営の協働化、テレワークを含む柔軟な働き方の推進などをあげた。
「経済情勢の変化に伴い、物価高騰や他産業での賃上げが進んでおり、介護分野からの人材流出も見られる。少子高齢化が進行する今後、現役世代(担い手)の減少が急速に進むことも想定される」
厚労省は「基本的な視点」でこう問題を提起。「良質なサービスを確保しつつ、人材不足に対応していくことが喫緊の課題」と明記した。また、「特に訪問介護などのサービスでは人材不足が顕著」との認識も示した。
このほか、認知症の高齢者への支援、医療ニーズへの対応、看取りの充実、リハビリ・口腔・栄養の一体的な取り組みの展開、LIFEの有効活用、給付の適正化・重点化などを進めることが重要とも記した。今後、こうした「基本的な視点」に沿って報酬改定の具体策の検討を進めていく考えだ。審議会は近く各論に入る。
◆「人材流出は危機的状況」
会合では委員から、人材確保につなげるための思い切った手を打つよう訴える声が相次いだ。
日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は、「人材の流出は今も危機的な状況で、このままでは介護現場が崩壊してしまう。今回の報酬改定で大幅な処遇改善がなされるよう求める」と主張。民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、「人材不足は『喫緊の課題』という表現ですら、少しのんびりしていると感じてしまう。現場はもっと逼迫している。少しでも効果がある施策を前へ進めないと、サービス提供の持続可能性が危うくなる」と警鐘を鳴らした。
一方、健康保険組合連合会の伊藤悦郎常務理事は、「現役世代はこれ以上の保険料負担に耐えられない」と牽制。日本経団連の酒向里枝経済政策本部長は、「処遇改善の前提として効果検証を行う必要がある」と指摘した。
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