介護報酬の引き上げに審議会で反対の声
「現役世代はこれ以上の負担増に耐えられない」

  2023/11/16

《 社保審・介護給付費分科会|11月16日 》



来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の16日の会合 ? 。厚生労働省はここに、介護施設・事業所の収支などを明らかにする「経営実態調査」の最新の結果を報告した。【Joint編集部】

調査結果は目下の厳しい経営環境を裏付けるものだったが、委員からは介護報酬の引き上げに反対する声もあがった。

大企業の社員らが加入する健保組合で組織する「健康保険組合連合会」の伊藤悦郎常務理事は、「今後も介護費が急増していく一方で、制度の支え手である40歳以上の現役世代は急減していく。保険料負担は既に大きく増えている。現役世代の立場で言うと、高齢者医療への負担も含め、これ以上の負担増には耐えられない」と主張。「利用者負担や保険料負担の増加に直結する点を踏まえれば、トータルで介護報酬を引き上げる環境にはない。国民負担の増加をできる限り抑えることが必要だ。制度の効率化・重点化に力点を置いた見直しが不可欠」と訴えた。

また、日本経団連の酒向里枝経済政策本部長は、「制度の持続可能性の確保、支え手の負担の重さという視点も非常に重要。バランスの良い議論が展開されることを期待している」とクギを刺した。

今回テーマとなった「経営実態調査」は、介護施設・事業所の昨年度の決算などを把握したもの。厚労省が今月10日に結果を公表していた。

それによると、昨年度の全サービス平均の利益率は2.4%。前年度より0.4ポイント低下し、2020年度調査と並ぶ過去最低の水準だった。特に施設系サービスの利益率の悪化が顕著で、特養と老健は初めてマイナスに転じていた。昨今の物価高騰や人件費の上昇などが大きく響いたとみられている。

会合では全国老人福祉施設協議会の古谷忠之参与が、「調査結果は介護施設・事業所の経営が大変厳しいことを表している。もはや事業者の経営努力だけでは立ち行かず、危機的な状況にある。来年度の介護報酬改定では基本報酬の大幅な増額、介護職員の処遇改善策の大幅な拡充を行ってほしい」と要請した。

また、日本医師会の江澤和彦常任理事は、「介護施設・事業所の経営はとても厳しく深刻な状況。このままでは存続が困難となるところも多い。特に施設系は制度創設以来の危機的状況にある。人材確保につなげるためにも介護報酬の大幅な増額を要望する」と強調した。

※当記事は掲載日時点の情報です。

"介護ニュースJoint引用"