《 社保審・介護給付費分科会|2023年11月撮影 》
介護現場での事故の発生・再発をいかに防いでいくか−。来年度の介護報酬改定を議論している審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で11月30日、このテーマが取り上げられた。【Joint編集部】
厚生労働省は国の事故情報の収集、分析、活用の精度を高め、全国的なPDCAサイクルの構築を目指すと説明。施設・事業所に事故情報を報告してもらう様式の統一化、報告の対象範囲の見直し、データベースの設計などを進める考えを打ち出した。
審議会でこうした方針への異論は出ていない。ただ、“事故と扱うべきケースはどこまでか”に複数の委員が言及した。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「例えば転倒は、施設内で様々な工夫をしていても、施設側に瑕疵がなくても防ぎきれない。転倒を事故として一律に報告させるのはいかがなものか」と問題を提起。「転倒が訴訟になり、施設側が多額の賠償責任を負う例が多い。転倒を事故として報告すると、こうした動きを助長することにならないか心配。事故を防ぐことは非常に重要だが、現場に報告を求める事故の定義をどうするのか、検討する場を設けるべき」と主張した。
また、日本慢性期医療協会の田中志子常任理事は、「転倒・転落は避けがたい老年症候群だが、なんでもかんでも施設の責任とするような認識を持っている方がいる。事故があって良いとは決して思わない。ただ、過度な転倒予防は安易な身体拘束やスピーチロックにつながる。訴訟を恐れるスタッフの心理的負担にもなる」と指摘。「転倒・転落や誤嚥を起こす高齢者の身体的特性について、国民や法曹界などに広く理解を得ることも並行して取り組んで欲しい」と要請した。