《 株式会社ねこの手:伊藤亜記代表取締役 》
訪問介護と通所介護を組み合わせた新たな複合型サービスについて、厚生労働省は来年度の介護報酬改定での創設を見送る方針を示しました。【伊藤亜記】
厚労省の昨年度の調査結果によると、訪問介護と通所介護を併用しているお客様は47%おられ、通所介護を提供する法人の55%が訪問介護を、訪問介護を提供する法人の53%が通所介護を展開しています。新たな複合型サービスの創設が見送られる中で、訪問介護と通所介護の専門性ある役割分担、連携は更に求められていくでしょう。
通所介護は「自宅でできることを増やす機能訓練」、訪問介護は老計10号(*)の「自立生活支援のための見守り援助」などをもとに、自立支援・重度化防止の観点からお客様の安心した在宅生活を支えるという意識が重要です。
* 2018年3月30日付け老計10号 =「自立生活支援のための見守り援助」とは、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うものであって、利用者と訪問介護員らがともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL ? IADL ? QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの。
そもそも、人は誰でも、「自分でできることは自分で行うこと」が自立した生活のために、プライドを持った生活のために必要です。下記を参考に、訪問介護と通所介護の連携による効果の高い介護を目指して下さい。
■ 訪問介護と通所介護で連携しよう!
在宅生活では、訪問介護と通所介護の連携が必要不可欠です。
《 例えば 》
下肢筋力は低下しているが掃除が「できる能力」はある。しかし、掃除は苦手で日常的に自分では掃除をしない。
このようなお客様の場合、(1)と(2)のような支援が考えられます。
(1)まずは「できる能力」を向上させるために、通所系サービスへ行く⇒通所系サービスで下肢筋力の向上(運動機能の向上)を目指す。
(2)日常的に「している活動」を向上させるために、訪問介護を利用する⇒自宅での掃除方法を身に付けて、日々の習慣にする。
訪問介護では、お客様が早期により重い状態に陥ることがないよう、日常生活の中で、料理や掃除のような場面を通じて、体を使ったり動かしたりするよう促すことが重要になります。
「これは自分1人でできるけど、これは1人では難しいので誰かに援助してもらいたい」「これは援助してもらえれば自分でもやっていける」。
こうした物事の判断、自分の生活を自分で選択して決定する自己決定権、そして自己の判断・決定に責任を負う自己管理能力が、本来の「自立」です。つまり自己決定権の行使であり、地域であたり前の生活を成り立たせることでもあります。「できることを増やす」「できないことを援助する」ことにより、お客様がなるべく自分の力で在宅生活を続けられるようにするのが「自立支援」の目的となります。
お客様がどう生きたいか ? 。その意向を尊重し、「その人らしい生き方を援助する」ことが自立支援であり、その道標としてケアプランや介護計画書はあります。
来年度の制度改正・報酬改定に向けて、どのように事業所の運営を見直すべきかお考えの法人様も多いかと思います。
「お客様ができることはやって頂く。できないことは支援し、少しでもできるようにする。訪問介護と通所介護で連携し、自分でできるように支援していく」。
これには自法人内だけでなく、他法人との連携も不可欠です。こうした視点が、真にお客様の尊厳の保持と自立支援、効果の高いサービスを提供する事業所として必要不可欠だということを、チームケアのあり方とともにお考え頂ければ幸いです。
※当記事は掲載日時点の情報です。