《 財務省での閣僚折衝|12月20日 》
来年度の介護報酬改定をめぐり、政府は20日に全体の改定率を正式決定した。鈴木俊一財務相や武見敬三厚生労働相らが折衝で合意した。【Joint編集部】
全体の改定率はプラス1.59%。来年度は432億円の国費を新たに投じる。
このうち、介護職員の処遇改善のために0.98%を充当。残りの0.61%を、各サービスの基本報酬や処遇改善以外の加算などに配分する。
このほか、処遇改善加算の一本化による効果(*)や食費・居住費などの「基準費用額」の引き上げにより、プラス0.45%相当の効果が追加的に生じると想定。「介護現場で働く人の処遇改善を着実に進めつつ、サービスごとの経営状況の違いも踏まえたメリハリある対応を行う」ことを確認した。
* 処遇改善加算の一本化による効果=厚労省は加算の算定率の上昇、上位区分への移行などを想定。
折衝後に会見に臨んだ武見厚労相は、「大変厳しい交渉だった。介護報酬はプラス1.59%で、これに処遇改善加算の一本化による効果などを含めると、およそ2.04%となる。実質的に2%台を確保できた。介護職の賃上げを実現できる水準を確保できた」と成果を強調。「この改定率を前提として、実際に処遇改善につながるようより具体的な議論を進めていく」と述べた。
東洋大学・福祉社会デザイン学部の高野龍昭教授は今回の改定率について、「事業者・職員はプラス5%程度の改定を望んでいたと思うが、厳しい財政状況のなか、診療報酬を上回る改定率となった背景には、政府の介護現場に対する一定の配慮があったことは想像に難くない」と分析。「十分な改定ではないとしても、事業者には経営を好転させ、職員の処遇改善に努める責務が生じることを肝に銘じるべきである」と話した。
介護・福祉人材の確保、育成、定着に注力する「介護人材政策研究会」の天野尊明代表理事は、「介護従事者の処遇改善がテーマとなって、過去有数の改定率(1.59%)が示されたことは非常に意義深い。政府として人材流出を何とか止血したいという思いのあらわれだ」と評価する一方で、「改定率の大半を占める賃上げ部分(0.98%)を除けば、残す0.61%で経営戦略の立て直しが求められるという厳しい現実がある。切っても切れない賃上げと経営基盤の安定化を両輪で舵取りしていくには、むしろこの改定をスタートにした長期戦を覚悟しなければならない」と指摘した。
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