《 全国介護事業者連盟・斉藤正行理事長 》
政府が20日に来年度から介護報酬を1.59%引き上げる方針を決めたことについて、国への働きかけなどを行ってきた全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長に受け止めを聞いた。【Joint編集部】
斉藤氏は「非常に厳しい交渉だった」との認識を示し、その中で高い水準の改定率(*)を関係者が一丸となって「勝ち得た」と説明。最終的な政府の判断も評価した。
* 今回は臨時改定を除くと過去2番目に高い改定率。過去最高は2009年度の3.0%。
そのうえで、今の介護現場の厳しい状況を踏まえ「やはり十分とは言えない」と強調。物価の動向や他産業の賃上げの進捗なども踏まえ、政府は今後も必要な追加策を迅速に講じていくべきだと主張した。
また、生産性向上による職員の負担軽減、職場環境の改善などに事業者が取り組むことの重要性も指摘した。斉藤氏のコメントは下記の通り。
全国介護事業者連盟・斉藤正行理事長のコメント
◆「もっと悪い結果もあり得た」
1.59%という改定率は、現場の皆さまがもろ手をあげて喜べる水準ではないと思います。人材不足、物価高騰、コロナ禍などで極めて厳しい経営状況を考えると、また、他産業と比較して大幅に低い介護職員の給与の水準を考えると、やはりこれで十分とは言えません。私も足りないと考えています。
ただ、財務省との交渉は極めてシビアでした。国の財政の健全化が急がれるなか、社会保障関係費の規律なき膨張を防ごうという強烈な意思を感じました。
当然、介護報酬の引き上げは現役世代の保険料などの負担増にも直結します。少子化対策に投じる財源も確保しなければなりません。振り返って考えると、もっと低い改定率に抑えられてしまう可能性も十分にあったと思います。
そんななか、改定率を1.59%とした政府の最終判断は一定の評価をすべきものと捉えています。介護現場の状況も理解してもらえました。関係者がそれぞれ粘り強く働きかけたことが大きく、業界が勝ち得た成果とも言えるでしょう。
私は少しほっとしました。現場の皆さまからは「不十分だ」「生ぬるい」とお叱りを受けると思いますが、それくらい非常に厳しい戦いだったことは確かです。みんな、それぞれができることは精一杯やったと思います。
◆「生産性向上などは必須」
当然、戦いはこれで終わりではありません。
政府は今回の改定の効果、物価の動向、他産業の賃上げの進捗などを踏まえ、今後も必要な追加策を迅速に講じるべきです。当面、介護現場の厳しい状況は続くでしょう。手遅れにならないよう、新たな財源の投入も果断に決定して頂きたい。我々も引き続き、こうしたことを訴える活動に力を入れていきます。
介護事業者の皆さまには、ぜひ求められる施策の推進に取り組んで頂きたい。サービスの質を高め、職員の負担軽減や職場環境の改善を図る生産性向上は必須です。利用者の自立支援・重度化防止も更に重要となるでしょう。
今回は1.59%でしたが、今後これを上回る改定率が実現する可能性はそう高くありません。今回のプラス改定の恩恵をどう活かすか ? 。より現実的な見通しに基づく戦略をしっかり立て、それを遅滞なく遂行していくことが重要だと考えています。
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